第12回 人間福祉学会2011 開催報告
11月19日、20日の2日間に渡り、「第12回人間福祉学会2011」が開催されました。 「いのちと暮らしと人生をトータルに支える -人間の存在価値と尊厳が揺らぐなかで-」をメインテーマに「人間らしく、自分らしく」生きることをどのように支えるのかを議論しました。
1日目は、岐阜都ホテルにて、「『死から生への選択』を支援する」をテーマに、講演、リレートーク、シンポジウムが開催されました。
まず、大阪大学大学院文学研究科教授浜渦辰二氏に「ヒューマン・ケアと人間観 -いのちと暮らしと人生を支えるー」と題した基調講演をしていただきました。(写真:1)
人間はそもそも多次元的な存在であり、ヒューマン・ケアは身体的、精神的、社会的さらにはスピリチュアルな広がりを持つ人間全体に関わるものであると、そして、人間は本質的に支え合う存在であるとのお話をしていただきました。
続いて「自殺予防の最前線」というテーマで、リレートークをしていただきました。
講師は、秋田県健康福祉部健康推進課、照井 信広氏(写真:2)、NPO法人蜘蛛の糸理事長、佐藤久男氏(写真:3)、NPO法人心に響く文集・編集局 代表、茂幸雄氏(写真:4)でした。
会場となった岐阜都ホテルのロビーには、活動を紹介するパネルも展示されました。(写真:5)
午後からは、東京大学大学院情報学環・学際情報学府 教授 姜 尚中氏の「人間の絆と生きる意味」をテーマとした記念講演がありました。(写真:6)
「医療や福祉」が市場経済の「挽き臼」に乗せられてはならないとしたうえで、新しいコモン(「共」)、新しい関係性の形成をとおした支え合いを創り出していくこと、地域を再生するには触媒型の人間の存在が必要であることの指摘がありました。
続いて、「死ぬことから生きることへ揺れ動くベクトルにどのように関わり支えるのか ―いのちと暮らしと人生をトータルにサポートする」と題するシンポジウムが開催されました。
シンポジストには、NPO法人ライフリンク代表・前内閣府本府参与清水康之氏、岐阜いのちの電話副理事長、常富佳子氏、群馬医療福祉大学看護学部教授、福山なおみ氏、さいたま市こころの健康センター副所長、岡崎直人氏を迎え、本学会副理事長で、清泉女学院大学学長、国立精神・神経センター精神保健研究所名誉所長の吉川武彦氏の司会で進められました。(写真:7)
自殺は極めて個人的な問題であるが、同時に社会構造的問題であり、シンポジストの発表で紹介された自殺防止の取り組みから、1人ひとりへの支援と合わせて、社会の総合的かつ包括的な対応が必要であることが示されました。
第2日は、中部学院大学各務原キャンパスに会場を移し、「『人間らしく生きる・自分らしく生きる』を支援する」をテーマとしました。
午前は、研究発表と障害者制度改革フォーラムを開催しました。DPI日本会議事務局、尾上浩二氏をコーディネータに、地元岐阜の方を中心に障害当事者や家族7人の報告を受け、障害者制度の改革に向けた議論が行われました。(写真:8)
午後は、日本社会事業大学大学院教授、佐藤久夫氏に「障害者制度改革の動向」と題したご講演をいただいたあと(写真:9)、引き続き、佐藤氏に司会をしていただき、シンポジウム「障害者制度改革の課題を問う -全ての人がいのちと暮らしと人生の主人公であるために-」が開催されました。(写真:10)
シンポジストには、尾上浩二氏、日本相談支援専門員協会代表、門屋充郎氏、社会福祉法人あゆみの家総合施設長、田口道治氏、岐阜県難病団体連絡協議会理事長、松田之利氏にご登壇いただきました。
障害者総合福祉法骨格提言を中心にたいへん熱意のこもった議論が行われました。改革が行われる今だからこそ、障害のある人本人や家族が声を出していく必要があること、そして、これから進む制度改革が岐阜においてはどうなっていくのかチェックしていかなければならないことが示されました。
2日間を通して、障害のある人もない人も、老いも若きも、すべての人が「人間らしく、自分らしく」生きることができるように、今こそ「いのちと暮らしと人生をトータルに支え合う仕組み作りに取りくむべき重要な時期であることが、講師とフロアーからの熱意あふれる発言から見えてきました。